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ツインタワーズがおくる、槇原敬之(ほぼ)全曲レビュー ライトあるみのブログ

03. Hungry Spider

初めて聞いたのは1999年春。
ドラマ『ラビリンス』の主題歌でした。番宣かCMが初だったかと。
これはドラマを見なければ!と思った記憶。

でも、全部通しで聞いた時、ちょっとうーん、と思ったのを今回思い出しました。
歌詞が独特。
蜘が主人公っていまだかつてあったのだろうか…?
槇原敬之のラブソング大好きっ子(主に歌詞が大好き)だった私は、虫嫌いというのもあり、まぁマッキーの新曲が売れたら良いなぁ程度に思ったはず。
ドラマも、二十代前半のあの頃に見るにはちょっと暗かったかな。

 

でも、今はこの曲の凄さがわかります。
マッキーのファンを公言されてない方でも『この曲イイよね!こんな歌書けないよね!』って声をよく聞きますし。

ただ。
他の曲が褒められるのは嬉しいのに、この曲に関しては心のどこかでチクリと胸が痛むんですよね。。
あの事件の時、薬をやっていたからこんな奇想天外な発想が出てきたんだと、あたかも真実のようにそう流布されてしまったので。
痛い記憶とシナプスが繋がってしまうんです。。

 

ライブで流れたり、槇友さんのようにマッキー大好きな人が「ハンスパ良いよね!」っていう言葉には「良いです良いです好き~!」な気持ちなんですけれど。
一般の方は『ハンスパ=薬使用で出来た傑作』って、思ってるんじゃ?と疑心暗鬼…。

文字で書くと、卑屈ですね、私(笑)

 

薬をやった彼を許す許さないは人それぞれで。
私自身はアーティストとして居てもらわなければ困る存在な彼の事を、判断する行為は適切ではないと思っています。

ただ、こないだの二度目の際に、思い知りました。
許す許さないは置いておいても、私はあの時深く深く傷つき悲しんでいたのだ、という事。
その行き場のない悲しみは、フリージングされていただけで、ニュース速報が流れた際に瞬間解凍されて、全身を駆け巡りました。
『なにやってんの、マッキー…』一気に力が抜けてその場にうずくまりました。

 

これ以上ここでこの件について書くのは違うと思うので止めますが、好きな反面苦しい想いが詰まった曲。
それが「Hungry Spider」です。

 

では、曲のレビューを。

ファルセット気味のコーラスで始まります。
『Hungry Spider Spider』
ここの声でもう心を鷲掴みされます。
ライブだと「立つぜ!」「踊るぜ!」と闘志みなぎる部分です(笑)私だけ?
印象的な音色はアコーディオンと思ってたんですが、調べるとバンドネオンという楽器だそうで。
……と、ここでバンドネオンの解説を始めようかと思いましたが、違うやん。MV見たら違うやん!アコーディオンやん!騙される所だったー!!(誰に)

 

ドラマ「ラビリンス」の主題歌である、というのは先ほど書きました。ドラマで使われたのがピアソラという作曲家の曲。
彼がバンドネオン奏者なんですね。アコーディオンと似た楽器なれど、バンドネオン奏者はアコーディオンと間違われると嫌だそうです(苦笑)
良かった、MVを見て。悩んだら基本に戻れ。あるみ覚えた!(バンドネオンの知識が増えたので、まぁ私的にはラッキーです)

 

ネットの海を調べるとアコーディオンCOBAさんが弾いてるとか(君といた未来のために、好きだったな)
MVでは違う方が弾いて(演じて)らっしゃるようですが。

注)10/05 追記 MVでのアコーディオンなんと本間昭光さんが弾いてました。どうりで見たことあるお顔だなぁと。往年のファンの方、間違った事書いてたらビシバシご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
余談ですがこのMV、東京事変の亀田さんが凄い髪形で出てらっしゃいます。一見の価値ありかと(笑)度肝抜かれますよ。

 

歌詞の解説にうつると、主人公が蜘蛛。恋する相手は蝶。
凄い発想と思いますが、元々ドラマの楽曲依頼があり作ったもので、ドラマの謎に蝶モチーフが鍵になっていたようです。
ドラマの内容とも、多少リンクしているようですね。

 そういう背景知らなければ、とんでもない所からの発想⇒薬のせい、となってもしょうがないのかな。

…しゅーん(落ち込んだ)

 

まぁ落ち込んでもしょうがないので続きを書きます。

八つの青い葉、は色々想像を巡らせるに、ヤツデかな?大きな手のような葉っぱを見た事ある方も多いかと。もしくは『八葉蓮華』という言葉が仏教用語であります。これは花弁の事なので違うか。木々の間に蜘蛛の巣を張ってる、が一番近いのかな。蝶がかかる位大きなサイズとなると、しっかりした枝は必要ですよね。

MVで紙芝居を女の子(蝶の化身?)に見せていますが、書かれている歌詞は絵本の文章のようにわかりやすいもの。

あえてこの後は細かく解説しないで、各々の頭の中で物語を味わってほしいな、と。

 

有名曲であればあるほど、その人の中で大事に育った’景色’があるように思います。

CDシングルのデザインからインスパイアされる世界観もあり……

 文字数を最初でかなり使ったので(笑)読んでくださってる方の心象に委ねたいと思います。

曲、デザイン、MVと、SONY時代の槇原敬之を作り上げたチームは、時代を問わない完成度の高い作品を届けてくれていたなぁと感心するばかり。

20年経っても色褪せないから凄いですねぇ。

  

さて。

「Hungry Spider」の歌詞で『(あるみ的)マッキーの天才性がいかんなく発揮された部分』だけ紹介しますね。

星のような粉をまくその羽根

おびえないように闇を纏わせた

夜に礼も言わず駆け寄る

歌詞を見ないと『???』となるんですけど、理解するとプラネタリウムのように鱗粉まみれの蜘蛛の巣が、漆黒の闇に浮かんでいるんです。

 自分の醜さを理解し、自分の姿で蝶がおびえないように、とひたすら願って動いてる蜘蛛のなんと不憫な事。

夜で良かったと感謝するのも忘れて、蝶に近づく。

 

言葉の言い回しが秀逸で、文学的。

怪しい雰囲気の曲が、詩の美しさで彩られ昇華されています。

沢山の蝶(ファン)の気持ちをつかんで離さない、蜘蛛の糸のような強力さ。

やはり名曲。

昨日のももたさんの「pool」でも書かれてましたが、「Cicada」は全編通して文学的を意識したのかな。アルバムデザインからして、文豪の夏って感じですし。

 

最後にまとめます。

はらぺこなのに、蝶を逃がす。

それは自分の命より大事な存在という証。

食物連鎖の自然界ではあり得ない行為です。

でも、だからこそ、愛が際立つ。

逃がした後の蜘蛛についての言及はありません。

もしかしたら蝶もこの蜘蛛からは逃れられても、次の瞬間に他の生物に捕食されているかもしれない。

それでも、蝶を逃したはらぺこの蜘蛛は、その後満足して死んでいくんだろうなと思うと、言いようのない気持ちになります。

良かった、と一言ですませられない何かがそこにあります。

愛って一体何なんでしょうね?

と問いかけながら、今記事はおしまいです。

 

PS MV本当に格好良いので、何とかして(笑)ぜひ見て頂きたいなぁ(大事な事なので2度言いました)